漫画家志望者へのハウ・トゥー・コミック『ヘタッピマンガ研究所R』(村田雄介著、集英社刊)では、『創作』という行為についてこうなぞらえています。
――“面白さ”を探し求めるというのは、真っ暗闇でコンパスも何も無いところを彷徨うことに似ている。
――手がかりのない真っ暗闇の道の中、遠くに輝く光を目指し、ただ自分を信じて前に進む。
過酷で不安だらけの旅において、自分を信じて前に進み続けるためには、並々ならぬ意志の強さが必要です。
本当にこの道であっているのか、進んだ距離が無駄にならないか、そもそも自分に向いているのか……葛藤と疑心しかないこの一人旅において、隣に立ち、寄り添い、共に暗闇を歩む、そんな存在になりたいのです。
社名である『ストレートエッジ』とは、『直定規』という意味です。
暗闇の中を歩く創作者の皆様の進むべき目印となれるように、定規というガイドラインに沿って迷わずまっすぐと、目的の地へたどり着けるように。そんな意味を込めて、社名としました。
すこしでもその手がかり、道標となるべく、創作者の皆様と作品、コンテンツに寄り添うことを心がけ、全ての皆様に『幸せ』を届けることを目指し、実現して参ります。
携わるコンテンツを、世界で通用する最高のエンターテインメント作品に育て上げ、広く、様々な方々に伝えていきます。
10年、20年と、創作者の皆様と共に歩める会社であることを心がけ、邁進してまいります。
編集者の仕事とは、なんでしょうか。僕はこう考えています。
作家と共に歩むこと。
作家が創作物を生み出す手助けをすること。
生み出された創作物の価値を最大限に高める努力をすること。
そして、価値を高めた創作物を、より多くの読者に、大きく、広く届けていくこと。
これらが、編集者の至上命題です。
しかしながら、理想はそうであっても現実は異なります。編集者は会社員でもありますから、所属する会社(版元の出版社)の利益を追求しなければなりません。
様々な業務をこなす中で、『避けられない事情』によって、『作家や創作物にとってのベスト』を尽くすことができなかったのは、一度や二度ではありません。
既存のメディア企業が誇っていた『メディアの優位性』はすでに弱体の一途を辿っています。
IT化によって個人ですらもメディア(媒体)となれる今、既存メディア企業の既得権益はますます少なくなっていきます。 iTunesなどの音楽定額制配信サービス、amazonやNetflixなどの映像定額制配信サービスにより、コンテンツはプラットフォームに呑み込まれ、安く買い叩かれていくでしょう。
今の市場は、『娯楽はタダ同然と考えるお金をかけないユーザーたち』を囲い込んだプラットフォーム企業が支配しています。そして、『ユーザーのランキングが売上げと面白さを決める』というトレンドがエンタメ業界を席巻しています。このようなコンテンツに厳しい現状の中では、既存の編集者では太刀打ち出来ません。
これからの編集者は、作家と二人三脚で作品作りをしていくこと……は、もちろん当然として、今の業界に縛られた作品展開を打開していく必要があります。
たとえば、日本のプロ野球選手がメジャーリーグに移籍したいとき、できるだけ有能なエージェントを雇いたいと考えます。
それと同じように、作家がより大きな舞台で勝負するためのパートナー(編集者)を雇う時代が、当たり前に来る、と僕は考えています。
作家は魂を削って作品を創り上げています。その魂の作品に寄り添い、親身かつ客観的に意見を伝え、価値のある打ち合わせを提供し、より“面白いほう”を目指してクオリティを上げる。
そうして作りあげたコンテンツを、『作品第一主義』で考え最大限にプロデュースしていきます。
そのためには、IT化により無限に生まれつつある『媒体』を有効活用することが不可欠です。
その作家/コンテンツに適合したベストなパートナー、ベストな宣伝施策、ベストなファンサービスを、無限にある媒体から選択し、速やかに、細やかに実行する……。
つまり、『媒体を編集する』のです。
それが、未来の編集者に求められていることだと考えています。